犬じゃけぇ。(銅版篇)



PAMPERED MENIAL / PAVLOV'S DOG

Artwork : ???
Label : ABC
Country : U.S
Released : 1975

アメリカのロックバンドの1stアルバム。私が持っているのはソニーから1993年に発売された日本盤CD。昔々、和田誠の「ヘビーメタルボンバー」というラジオ番組を偶々受信していたら、プログレッシブロック特集だとかでこのバンドの「Song Dance」がオンエアされ、ボーカルの特異な声質に軽く衝撃を受け、翌日最寄りのCDショップへ買いに走っていた。…という話と全く同じ事を某メタル雑誌の編集者も書いていたので、件の番組がきっかけでこのバンドの存在を知り、CDを購入した人の数はかなり多いんじゃないかと思われる。それだけインパクトが凄かった。

ジャンルとしてはプログレッシブロックに分けられているんだけど、そんなに捻くれている訳でも凝っている訳でもなく、アルバムを出す毎に普通のロックに成って行った事を考えると、意外と当時の流行を取り入れてみただけだったのかもしれない。などと、当時この世に生まれてもいなかった私なんかは思う訳ですよ。

アメリカ人らしからぬ叙情的な旋律と繊細な音作りは、如何にも日本人が好みそうな感じ。あとはボーカルのデヴィッド・サーカンプの声質が受け入れられるかどうかですね。私は彼の声を聞いてアニメ「さすがの猿飛」の忍豚(声:田中真弓)を思い起こしましたな。当時通っていた高校の教室のラジカセで再生してみたら、お調子者のクラスメートが「にん、とおぉおぉおぉおぉぉん!」とか言って茶化し始めたので、まあそう云う事ですよ。不本意な形とはいえ、お気に召して頂けた様で何よりです。

全9曲収録で、1曲目から8曲目までスムーズに曲が流れて行くんだけど、ラスト曲で素頓狂な転調を入れてしまっている所為で折角の余韻がぶち壊しになってしまっているのが最大の欠点ですかな。個人的には、この曲はカットしてインストの8曲目で締めた方が良かったんじゃないだろうかと思う。

ジャケットは、オリジナルでは縦構図の絵が白地の中央に配置されている仕様だったのが、レーベル移籍後に正方形にトリミングされ、カバーいっぱいに引き延ばされた模様。以前何処かのレコード店でオリジナルのアナログ盤を見かけた時に、随分汚れているなあと思ったんだけど、黄ばみや染みは、元々そういうデザインらしい。知らなかった。現在はトリミング前と後の両方の仕様でCDが出回っているけれど、CDジャケットのサイズを考えると、トリミング後の方が収まりが良い様に感じますね。

そのジャケット及びインナーの銅版画は19世紀の人気画家エドウィン・ランドシーア制作の油絵を複写したもので、リードギターのスティーヴ・スコーフィナの母が修道院の古本市場で購入した「ロバート・バーノン(美術界のパトロンのおじさん) コレクション」に収録されていたものなのだそうだ。表ジャケの絵のタイトルは「Low Life」で、丸々に太った雑種犬がのんびりとしている。対して裏ジャケで高そうな家具や小道具に囲まれている引き締まったハウンド犬の絵のタイトルは「High Life」。そしてアルバムのタイトルは「甘やかされた召使い」。これは表ジャケのズングリ雑種(その辺の人達からホイホイ餌を貰っているのだろう)の事を指しているのは明らか。一方、優雅だけど厳しい躾や規則のある生活を送るハウンド犬。うーん、なかなか哲学的で風刺の効いたアートワークだ。しかし歌詞の対訳を読む限り、その様な要素が一切感じられないのはどういう事なんでしょうね、ラブソングばっかりっす。しいて言えば最後の曲が素頓狂で間抜けっぽい内容に関わらず歌詞がシリアスだったり。因みに邦題は「禁じられた掟」。どこをどう捻ったらその様な言葉が出てきたんだろう。意訳って難しい。

ハー度  :★★★
プログレ度:★★★
哀愁度  :★★★★